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日本大学理工学部精密機械工学科  青木義男先生インタビュー

2015-07-29

  今回は、青木教授の研究室へ潜入取材にやってきました!こちらの研究室では、
構造力学の研究が日夜行われています。

青木先生の紹介

( 青木研究室HP , フラーレン , WAO , J-GLOBALインタビュー )

日本大学理工学部次長、精密機械工学学科・教授。
構造力学の権威であり、モノ材料や耐久性をはじめとした設計技術についての研究を行っています。

現在、日本大学 N.(エヌドット)国際救助隊運営メンバーとしても活動し、災害、医療、教育問題に対して「工学に何ができるか」を研究しています。

「理系ジャンルだけではなく、文系の柔軟性と発想力を」、と芸術学部との共同研究においても活躍を見せています。

青木研究室のフラーレンページはこちら

青木先生

ー 構造力学ってそもそも何?

  日常生活ではなかなか聞く機会の無い構造力学。そもそも構造力学ってどんな分野なんでしょうか?

それは、ズバリ「モノの強度を追求する」学問!

モノがどのくらいの重みや圧力などに耐えられるのかの強度を分析してくれる構造力学のおかげで、地震に強い家や街と街を繋ぐ大きな橋が安全に使えているんです。

青木教授「デザイナーの優れた造形を現実のものとしてこの世に誕生させる事が出来るのが、私たちの学問領域です。研究者、というよりはエンジニアという方が分かりやすいですかね」

なるほが、構造力学の技術が無かったら、デザインは絵に描いた餅になってしまう......。何気なく使っている身の回りのものに深くこの分野は関係しているんですね。

ー でも、構造力学って、ちょっと地味、かも......?

王道の研究よりも、時代のニーズにあった研究をしたい!

同じ精密機械学科では、ロボットや飛行機などの最新研究も行われていました。確かにそれもカッコいいことだったけれど、自分の生活の中に使われているものがパッと直せる方が自分にはカッコいい!と青木教授は言います。

青木教授「例えばデートに行って、車がエンストを起こしたとき。ちょっと道にある電柱から針金を借りて直しちゃったら、カッコいいでしょう?それに、身の回りのモノの仕組みが分かれば、未然に事故を防げたり、いざという時に対応ができる人間になれるじゃないですか」

あ、そう考えてみると確かにカッコいいかも......!女の子はモノを修理してくれる男性に魅力を感じやすいですよね。理系の研究って研究室にこもってひたすらデータを取って......というイメージかあったんですが、なんだかすごく夢とユーモアがある世界に思えてきました!楽しそう!

ー 青木先生の研究って?

青木先生が実際に研究されてる事を教えてください!!!とお願いすると

青木先生がご自分の研究の一覧表を見せてくださいました。

  • 1. 動脈狭窄症治療用バルーンカテーテルの構造適正化に関する研究
  • 2. バルーンテザーによる緊急通信システムとテザー衛星クライマーの開発研究
       (宇宙エレベーター開発のための基礎研究)
  • 3. FRP水上飛行機用フロートの耐衝撃性と離着水性能向上設計
  • 4. 遊技機械の構造ヘルスモニタリングとロボット点検機に関する研究
  • 5. 自動車衝突安全性能向上のための新素材衝撃吸収・検知システムの開発
  • 6. 歯列矯正用アンカースクリューの構造適正化に関する研究

む、6つも平行して研究なさってるんですか!?

青木教授「私はいつも現場にてモノがどのように使われていて、どう動いているかを確認していたいんです。現場主義、と言いますか。そうしますとね、1つの研究では間に合わない。現場では毎日色々な問題が起こるでしょ、それを1つ1つ拾うためには、平行して研究する事が必要になるんですよね」

......なるほど、それは確かに大切な事かも。

研究している人が実際にモノの使われている現場に行って検証してくれていることはかなり心強いです。

今回は青木研究室の入門編、ということですので、失礼ながら2つ抜粋してちょっと詳しく説明してみたいと思います!

・FRP(繊維強化プラスチック)を活用する場所を研究

宮城県沖地震が発生した時、アパートやマンションの屋上にあった水タンクが倒れて破損してしまいました。

そこで青木教授が取り扱うようになったのが、当時新素材であったFRPというプラスチック素材をこの水タンクに採用する、という研究です。

プラスチック素材にする事で、今まで金属で出来ていた水タンクにサビがついて味や色が変わってしまう事がなくなりました。また、FRPという素材は金属よりも柔軟性が高いので、揺れや衝撃にしたいして壊れづらい構造を作る事ができるようにも。

また、FRPとFRPの間に発泡スチロールを挟む事で、冷えやすかった金属の水タンクを大きく勝る断熱性も獲得しました。その画期的な結果に当時青木教授の研究していたFRPを使った水タンクは普及率を飛躍的にあげ、どこの建物の上を見ても青木教授のFRP水タンクがみられるようになりました。

あれは自分が研究したものなんだよ、って、一度は言ってみたいですよね。

『地震荷重をうけるFRP水タンクの構造特性に関する研究』という論文も書いています。青木教授は今でもFPRを色々なモノに採用する研究をなさっています。

近年ですと、水上飛行機の機体にFRPを使う、というものがあるそうです!

すごい!FRP!


・エレベーターの機能向上・点検業務など

今でさえエレベーターの耐久性や機能性は震災などの影響で注目されていますが、青木教授が学生の頃、エレベーターの研究をする研究者の方はいなかったと言います。

青木教授「当時の指導教授にFRPの研究論文を書いた後に、じゃあ、次はエレベーターやってみるか。と言われてそのままエレベーターの分野に来てしまいました。なんだか単純でしょ?学問との出会いってそういうものです。今でもエレベーターの研究をしている人は少ないですから。ひとかどの人になれた、と思っていいのかな」

エレベーターの事故が起きれば警察とも連携して調査を任される程、青木教授は日本エレベーター界の権威でいらっしゃいます。

  • 老若男女様々な人が利用するエレベーター。
  • 小さい子供が一人で中に閉じ込められたらどうしよう?
  • 車椅子の人も利用しやすい構造はどんなものなんだろう?
  • 海外の人でも迷う事無く操作できるようなデザインはどんなものだろう?
  • など、利用人がいる分だけ多くのケースを想定して設計をしていかなくてはなりません。

青木教授は、近年のエレベーターはブラックボックス化(構造がどうなっているか分からないような仕組み)になっていると指摘されます。

青木教授「エレベーターが故障した時、それに乗っている人や管理人の人が見ても何が事故を巻き起こしたのかというのは分からないのが現在のエレベーターです。だからこそ私たちのようなエンジニアがその場まで赴いて活躍できるのですが、今やどの建物にもあるエレベーターの管理は少ないエンジニアの手に追いきれなくなってきているのも事実です」

明日、震災が起きて全てのエレベーターがストップしてしまったら......。中に入る人を救助する、避難させるためのシステムはあるものの、通常運転まで復旧するには何日かかってしまうんでしょう......。

そう思うと気が遠くなってしまいますね。

日常には欠かせないエレベーターの研究ですが、青木教授の後任の研究者の方がかなり少なく、今でも現場に呼ばれる事もあるそうです。


今後、エレベーターはどうなっていくんでしょうか......。

そんな青木教授の研究が、現在「宇宙エレベーター」の研究に役立っています。

大林組が2014年に構想を発表した宇宙エレベーター。宇宙に浮かぶ静止衛星からケーブルを降ろして、それに沿って人やモノを運ぶ宇宙エレベーターは、より多くの人々に宇宙を体験させる機関になるのでは、と期待されています。

しかし、その大掛かりな構造から、天災やメンテナンス、宇宙ゴミの衝突などのリスクが多く残り、それらをどう処理するかも実現の要となっています。

青木教授「2年後には静岡大学と一緒に実際の宇宙実験を行う予定です。今までは地上でのシュミレーションだったので、想定できる範囲がかなり狭かったのですが、JAXAの協力が得られれば、導電デザーを使った宇宙ゴミの処理実験もできます。この試みは宇宙エレベーターの近年の実現に大きな影響を与えますよ!」

建物の中から宇宙まで!人間の技術が向上していく世界のまっただ中に、青木教授の研究はあるんですね......。なんだかワクワクします。

ー 青木教授の研究室が知りたい!

  • 私たちの日常と未来を支える研究が日夜行われる研究室ってどんなところなんでしょうか?
  • ドラマでみる理系の研究室は、白衣を着た人たちが机の上で実験を行ったり、コンピューターでシュミレーションをしたりしていますよね。青木教授の研究室もそんなかんじなんですか?

青木教授「確かにそういうこともやります。でも、基本的にはもっと肩の力を抜いた環境ですよ。うちの研究室の理念は「何事もハックしろ」ですから」

ハック!?ハックって、あのパソコンとかでやるハッキングのことですか?

青木教授「ははは、違います違います。最近よく耳にする、ライフハックってあるじゃないですか?身の回りにある、あたり前に使っているものをより使いやすくする。それを実験でも常に意識しなさいと教えています」

ライフハック!よくバラエティ番組で紹介されている「おばあちゃんの知恵袋」のようなことですよね。それを実験に......?

青木教授「3Dプリンタってあるでしょ?あれで印刷する時に使うインクになる樹脂。あれ、すごく高価なんです。そうなると、せっかくの機械を使うのにためらってしまいますよね。だから学生に『樹脂の代わりになるものを探せ』って言って研究させたりしてます。3Dプリンタの中に、色々なものを入れて試すんです」

ええ~!なんだか小学校のときの自由研究みたいで楽しそうです。

卒業生の方の中には、教授が学生の頃、電柱にあった針金で故障した車を修理した、という話を聞いて、「自分もやってみよう!」と思った学生さんがいたそうです。

  • その後どうなったかって?
  • 彼は大手自動車メーカーに入って自動車の構造開発をしているそうです。
  • そんな彼の楽しみは、休みの日に自分の持つコンパクトカーを改造して、颯爽と走るスポーツカーをビュンと抜いて走ること。
  • まさかスポーツカーの持ち主も、コンパクトカーに追い抜かされるとは思いませんよね......。そのやられた!と思われる感覚がたまらないそうです。

なんだか、子供の心を忘れない大人って素敵ですね。

私の中にあった研究者の人たちのイメージが青木教授の話を聞いているとみるみる変わっていってます。

ー 研究室内で行われてる実験って、どんなものがあるんですか?

青木教授「研究室で最近よく出入りしてるのはN.RESCUREという団体です」

え、N.RESCURE?すみません、勉強不足なもので......それってなんですか?
(N.RESCUREホームページ:http://n.rescue.nua.jp/purpose.html)

青木教授「読み方はエヌドットレスキュー。日本大学国際救助隊の呼称です。東日本大震災を契機に、被災地で生じる教育、医療、生活における問題が浮き彫りになってしまったんです古くなった建物をどうするかとか、壊れた後の学校再建はどうするかとか、過疎地域の医者不足をどう解決するか、とか......。もう沢山あるんですね」

「それを、大学で支援できないかというのがこのプロジェクトです。日本大学はマンモス校。学部の種類も学生も沢山あります。その学部が連携体制をつくって、研究と教育成果を生活に根ざしたものにできるように、共同開発をしてるわけです」

なるほど、そこに学生が出入りしてる、というのはどういうことなんでしょう?

青木教授「宇宙エレベーターチャレンジというのを最近やりましたね。静岡で開催された大会なんですが、私たちの研究である宇宙エレベーターの昇降機になるであろうクライマーを、今の段階の技術でどのくらい登らせる事が出来るか、という実験です」

  • あ!聞いた事があります。
  • 一昨年は1200メートルまでの昇降が成功したんですよね。

青木教授「はい、実際に昇降させた時に機械部品や電子機器の耐久性がどこまでもつのか、という実験にもなります。研究室を飛び出して外で実際に打ち上げるとなると、危険も伴うし体力も使うんです。けど、短期間で驚く程学生達が技術的にも精神的にも成長していくのを見ると感慨深いんです」

青木教授の常に現場に赴く、という姿勢が学生達の研究にも活かされているんですね。学生生活にそういう経験を出来る事は、とても素敵です。今後の学生さんたちのご活躍も、楽しみにしています!

ー 青木先生は、学生にはどうあってほしいですか?

理系の分野は苦手だからやらない、という考えは持ってほしくないという青木教授。実際、日本大学の理工学部にはパワーアップセンターという、AO入試などで入学した理系専門分野が苦手な学生のための教育プログラムがあるそうです。

青木教授「入学してすぐに、理系専門分野が苦手で授業についていけないという学生が現れるんです。そういう学生に、私たちは「君のやりたい研究にはこういう勉強が必要なんだよ」というヒントを与えて、つまずいたら授業外の時間でも教えてあげる、という場所を与えています」

え!?まるで高校の担任の先生みたいですね。大学でそこまでやってくれる場所ってすごく貴重だと思います。私の学部にもぜひ導入してほしいなあ。

青木教授「全ての大学の全ての学部に導入するべきだと思います。実際、最初は落ちこぼれか?というくらいやる気のなかった生徒が、勉強一本で入ってきた学生よりもこのプログラムで優秀になっていくこともあるんです。
彼らは人より自分の能力に劣っている部分がある事が分かっていても、将来やりたいことへのこだわりをちゃんと持ってる。それが、なによりも能力をアップさせるいい材料になるんですよ」

素晴らしい雑草魂!!そんな学生想いの環境があるからこそ、本人たちもその期待に応えたい、という気持ちが大きくなるんだと思います。誰かに応援されるのは本当に嬉しいですよね。

青木教授「あとはやっぱり、ライフハック。それを楽しんでほしい。俺は皆が使うものをより便利に使えるぞ!とか、そういう研究を楽しんで取り組める気持ちを持ってほしいです」

冒頭にデザイナーの優れた造形を実現させるのがエンジニアの仕事、とおっしゃっていましたが、そのデザイナーの発想も自分で持てる学生が一番の理想、ということでしょうか?

青木教授「そうですね。でも、別に絶対そうあるべきとは言いません。それよりは、誰かが考えたものに更にアイディアを加えられる、実現性を与えられるフットワークの軽さが欲しいです。私たちはエンジニアの仕事は子供たちが描くような夢を技術や研究で後押しすることですから」

ー 君の夢は現実に起こせるものだ!と見せるのがエンジニア

2010年から始まった22世紀の予言アイディアコンクールの審査に参加されていた青木教授。この試みって、先ほどおっしゃっていた子供たちの描く夢を実現させる、というのに似たものを感じる企画ですよね。

青木教授「似た、というか、本当に実現させちゃいましたよ。この企画」

え?どういうことですか?

青木教授「入選した子供たちの作品の中で、消費されてしまうエネルギーを使わない車を作りたい、といったものが印象に残ったんですよね。そこで、もし実現したらどうなる?というイメージビデオだけじゃなくて、実際にガソリンや電気を使わない車を作ってみればいいじゃないか、と思い立ったんです」

なんと、青木教授はコンクールの入賞式の際に「ゴムの弾性力で走る車」を作って、アイディアを出した小学生に実際に走る姿を見せてあげました。

日本大学理工学部のキャンパス内を、夢に思い描いていたゴム自動車が颯爽と走っていく......。その子は感激して、将来は絶対研究者になる!と意気込んでいたそうです。
なんだか、すごくドラマチックなエピソードですね、彼女の人生に大きな影響を与えたなんて。

青木教授「人は、こうすれば実現できるはず、という理屈だけじゃ納得してくれないんですよ。机上の空論とはよく言いますが、口で言うのは簡単だよな、と言って行動に移す力にはならないんです。だから、どんなに小さなことでも実現させて見せる。そうすると人の夢は急に現実味を帯びて、その目標に向っていってみたいと思うようになれるんです」

なるほど......。夢を形にするのがエンジニア、ということですね!

ー 今後、先生の研究はどうなっていくんでしょう?

青木教授「これからも現場に行き続ける姿勢は変えません。それはもちろんエレベーターの研究でも、医療で使われる素材の研究でも。そこに更に教育、という領域を付け足してみたいな、と思っています」

青木教授は板橋区の教育委員会委員を拝命されたとお聞きしました。

教育に対して、どんな活動をされる予定ですか?

青木教授「構造力学という学問と、他の学問をコラボレーションさせる活動がしたいです。たとえば、芸術。芸術家の人が思い描く難解な造形を、どうやって自立させるか、どんな素材を使うか」

「彼らのアイディアが実現不可能だから潰されてしまうということがないように、開発ロードマップを与える。こういう学問領域を越えて交わる事で新たなニーズや問題解決のヒントが生まれることが多いです。それを重視した活動がしたい。
そして、より多くの人の夢を実現できる教育環境づくりをしていきたいです」

  • 芸術学部に所属している私としては、とても夢のあるお話を聞かせていただけました!
  • 今後も青木先生の更なるご活躍をお祈りしています!ありがとうございました!
  • (文・株式会社 ForWit ライター:皐月彩)